逆行列とは?定義と2つの求め方である掃き出し法(行基本変形)、余因子行列を例題を用いて解説

数学

こんにちは(^^)/

今回は逆行列についてです。

この記事では、逆行列の定義と存在条件、そして代表的な2つの求め方である掃き出し法余因子行列を用いた方法について例題を交えて解説していきたいと思います。

$n$ 次正方行列 $A$ に対して、以下の関係を満たす $n$ 次正方行列 $X$ が存在するとき、$X$ を $A$ の逆行列と呼び、$A^{-1}$ と表記します。

$$A X = X A = I$$

※ $I$ は単位行列です。

逆行列が存在する条件

すべての正方行列に逆行列が存在するわけではありません。逆行列が存在するための必要十分条件は、行列式 $\det(A)$ が $0$ でないことです。

$$\det(A) \neq 0$$

行列式が $0$ になる場合、空間が潰れて次元が下がってしまうため、元の状態に戻す変換(逆行列)は定義できなくなります。逆行列を持つ行列のことを「正則行列」と呼びます。

具体的な数値が与えられた行列の逆行列を求める際、最も計算量が少なく実用的なのが「掃き出し法」です。

計算手順

  1. 元の行列 $A$ の右側に、同じサイズの単位行列 $I$ を並べた拡大行列 $(A \mid I)$ を作ります。
  2. 行に対する基本変形(ある行を定数倍する、ある行に別の行の定数倍を足す、行を入れ替える)を繰り返し、左側の $A$ を単位行列 $I$ に変形します。
  3. 左側が $I$ になったとき、右側に出来上がった行列が逆行列 $A^{-1}$ です。

実際に問題を解いていきましょう。

[問題]

次の行列 $A$ の逆行列を掃き出し法を使って求めよ。

$$A = \begin{pmatrix} 1 & 1 & 0 \\ 0 & 1 & 1 \\ 1 & 0 & 1 \end{pmatrix}$$

[解法]

行列 $A$ の右側に単位行列を並べ、行基本変形を行います。

$$\begin{pmatrix} 1 & 1 & 0 & \big\vert{} & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 1 & \big\vert{} & 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 1 & \big\vert{} & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}$$

まず、1列目を整理します。3行目から1行目を引きます。

$$\longrightarrow \begin{pmatrix} 1 & 1 & 0 & \big\vert{} & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 1 & \big\vert{} & 0 & 1 & 0 \\ 0 & -1 & 1 & \big\vert{} & -1 & 0 & 1 \end{pmatrix}$$

次に、2列目を整理します。3行目に2行目を足します。

$$\longrightarrow \begin{pmatrix} 1 & 1 & 0 & \big\vert{} & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 1 & \big\vert{} & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 2 & \big\vert{} & -1 & 1 & 1 \end{pmatrix}$$

3行目を2で割り、左下の成分をすべて $0$ にします。

$$\longrightarrow \begin{pmatrix} 1 & 1 & 0 & \big\vert{} & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 1 & \big\vert{} & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & \big\vert{} & -\frac{1}{2} & \frac{1}{2} & \frac{1}{2} \end{pmatrix}$$

今度は下から上に向かって $0$ を作ります。2行目から3行目を引きます。

$$\longrightarrow \begin{pmatrix} 1 & 1 & 0 & \big\vert{} & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & \big\vert{} & \frac{1}{2} & \frac{1}{2} & -\frac{1}{2} \\ 0 & 0 & 1 & \big\vert{} & -\frac{1}{2} & \frac{1}{2} & \frac{1}{2} \end{pmatrix}$$

最後に、1行目から2行目を引きます。

$$\longrightarrow \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & \big\vert{} & \frac{1}{2} & -\frac{1}{2} & \frac{1}{2} \\ 0 & 1 & 0 & \big\vert{} & \frac{1}{2} & \frac{1}{2} & -\frac{1}{2} \\ 0 & 0 & 1 & \big\vert{} & -\frac{1}{2} & \frac{1}{2} & \frac{1}{2} \end{pmatrix}$$

左側が単位行列になったので、右側が逆行列です。$\frac{1}{2}$ を前に括り出してまとめます。

$$A^{-1} = \frac{1}{2} \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 \\ 1 & 1 & -1 \\ -1 & 1 & 1 \end{pmatrix}$$

次に、「余因子」を用いた公式です。

余因子について知りたい方はこちらの記事をご参照ください↓↓↓

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余因子行列の定義と公式

行列 $A$ の各成分 $a_{ij}$ に対する余因子を $\tilde{a}_{ij}$ とします。

この余因子を成分とする行列を転置したもの(行と列を入れ替えたもの)を、余因子行列 $\tilde{A}$ と呼びます。

$$\tilde{A} = \begin{pmatrix} \tilde{a}_{11} & \tilde{a}_{21} & \dots & \tilde{a}_{n1} \\ \tilde{a}_{12} & \tilde{a}_{22} & \dots & \tilde{a}_{n2} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ \tilde{a}_{1n} & \tilde{a}_{2n} & \dots & \tilde{a}_{nn} \end{pmatrix}$$

(※ 添え字が $i$ と $j$ で逆転していることに注意してください)

この余因子行列 $\tilde{A}$ を用いると、逆行列は以下の公式で求まります。

$$A^{-1} = \frac{1}{\det(A)} \tilde{A}$$

こちらも、実際に問題を解いていきましょう。

[問題]

先ほどと同じ行列 $A$ の逆行列を、余因子行列を用いて求めよ。

$$A = \begin{pmatrix} 1 & 1 & 0 \\ 0 & 1 & 1 \\ 1 & 0 & 1 \end{pmatrix}$$

[解法]

まず、行列式 $\det(A)$ をサラスの方法等で計算します。

$$\det(A) = 1(1-0) – 1(0-1) + 0 = 1 + 1 = 2$$

(行列式の求め方については下の2つの記事をご参照ください↓↓↓上は3次までの行列式、下は4次以上の行列式で有効です。)

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次に、すべての成分の余因子 $\tilde{a}_{ij}$ を計算します。

  • $\tilde{a}_{11} = +(1-0) = 1$
  • $\tilde{a}_{12} = -(0-1) = 1$
  • $\tilde{a}_{13} = +(0-1) = -1$
  • $\tilde{a}_{21} = -(1-0) = -1$
  • $\tilde{a}_{22} = +(1-0) = 1$
  • $\tilde{a}_{23} = -(0-1) = 1$
  • $\tilde{a}_{31} = +(1-0) = 1$
  • $\tilde{a}_{32} = -(1-0) = -1$
  • $\tilde{a}_{33} = +(1-0) = 1$

これらを並べて転置し、余因子行列 $\tilde{A}$ を作ります。

$$\tilde{A} = \begin{pmatrix} 1 & 1 & -1 \\ -1 & 1 & 1 \\ 1 & -1 & 1 \end{pmatrix}^T = \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 \\ 1 & 1 & -1 \\ -1 & 1 & 1 \end{pmatrix}$$

最後に公式に代入します。

$$A^{-1} = \frac{1}{2} \begin{pmatrix} 1 & -1 & 1 \\ 1 & 1 & -1 \\ -1 & 1 & 1 \end{pmatrix}$$

掃き出し法で求めた結果と完全に一致することが確認できました。

余因子行列を用いた公式を $2 \times 2$ 行列に適用すると、よく知られた以下の公式になります。

$$A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$$

$$A^{-1} = \frac{1}{ad – bc} \begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a \end{pmatrix}$$

主対角成分($a$ と $d$)を入れ替え、副対角成分($b$ と $c$)の符号をマイナスにし、行列式で割ります。2次正方行列の場合は、この公式を暗記して直接計算するのが最も効率的です。

今回の記事のまとめです。

  • 定義: $AX = XA = I$ を満たす行列 $X$ が逆行列 $A^{-1}$。
  • 存在条件: 行列式 $\det(A) \neq 0$ であること(正則行列)。
  • 掃き出し法: $(A \mid I)$ を行基本変形で $(I \mid A^{-1})$ にする。
  • 余因子行列の公式: $A^{-1} = \frac{1}{\det(A)} \tilde{A}$。

逆行列は、連立一次方程式の解法や、座標変換など様々な場面で必要となります。目的に応じて2つの求め方を使い分けられるようにしておきましょう!(^^)!

今回は以上になります。

ではまた(^^)/~~~

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