逆行列や固有値を求める際に当たり前のように登場する行列式(ディターミナント)。
今回はこの行列式の計算方法やその意味について解説していきたいと思います(^^)/
2次・3次行列式の計算方法(サラスの方法)
行列式は、正方行列に対してのみ定義されるひとつの「数値」です。行列 $A$ の行列式は $\vert{}A\vert{}$ または $\det(A)$ と表記します。
まずは実用的な2次・3次の計算方法から確認しましょう。
【2次正方行列の行列式】
斜めに掛けて引くだけのシンプルな形です。
$$\begin{vmatrix} a & b \\ c & d \end{vmatrix} = ad – bc$$
【3次正方行列の行列式(サラスの方法)】
右斜め下に向かって掛けたものを足し、左斜め下に向かって掛けたものを引きます。
$$ \begin{vmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix} = a_{11}a_{22}a_{33} + a_{12}a_{23}a_{31} + a_{13}a_{21}a_{32} – a_{13}a_{22}a_{31} – a_{11}a_{23}a_{32} – a_{12}a_{21}a_{33} $$
※4次以上の行列式に対しては、このサラスの方法は使えません。別の記事で解説している「余因子展開」を使って次元を下げる必要があります。こちらの記事になります↓

行列式の図形的な意味
行列式は単なる計算ルールではなく、明確な図形的な意味を持っています。
一言で言えば、行列式とは「行列によって変換された空間の面積(体積)の拡大率」を表しています。
2次元空間で考えてみましょう。2つの列ベクトル $\mathbf{v}_1 = \begin{pmatrix} a \\ c \end{pmatrix}$ と $\mathbf{v}_2 = \begin{pmatrix} b \\ d \end{pmatrix}$ が作る平行四辺形の面積 $S$ は、まさに2次行列式の絶対値になります。
$$S = \vert{}ad – bc\vert{} = \vert{}\det(\mathbf{v}_1, \mathbf{v}_2)\vert{}$$
行列式が $0$ になるということは、変換後の面積(または体積)が $0$ になる、つまり「空間がペシャンコに潰れてしまう」ことを意味します。一度潰れた空間は元に戻せないため、「行列式が $0$ のとき、その行列は逆行列を持たない」という重要な性質に繋がるのです。
また、解析力学での変数変換(ヤコビアン)や、統計力学における位相空間の体積計算などで「体積の拡大・縮小率」を求める際にも、この行列式の概念がそのまま使われます。
イメージはこんな感じです。

n次正方行列式の厳密な定義と導出の背景
行列式の本質が「体積の拡大率」であることを踏まえると、$n$ 次元の一般的な行列式が満たすべき3つの性質が自然と決まります。
- 多重線形性: 1つのベクトル(辺)を $c$ 倍に伸ばすと、体積も $c$ 倍になる。
- 交代性: 2つのベクトル(辺)の順番を入れ替えると、体積の「向き(符号)」が反転する。同じベクトルが2つあると体積は $0$ になる。
- 規格化: 基準となる単位立方体(単位行列 $I$)の体積は $1$ とする($\det(I) = 1$)。
実は、この3つの性質を満たす関数を数学的に組み立てると、以下のたった1つの定義式に一意に定まります。
$$\det(A) = \sum_{\sigma \in S_n} \text{sgn}(\sigma) a_{1\sigma(1)} a_{2\sigma(2)} \dots a_{n\sigma(n)}$$
- $\sigma$ は $1$ から $n$ までの数字の並び替え(置換)を表します。$S_n$ はそのすべてのパターンの集合です。
- $\text{sgn}(\sigma)$ は符号関数といい、並び替えの際に要素を入れ替えた回数が偶数回なら $+1$、奇数回なら $-1$ になります(交代性に由来します)。
- 各行・各列から必ず1つずつ要素を選んで掛け合わせ、すべての並び替えパターンについて足し引きを行う、という意味です。
この厳密な定義を展開していくと、先ほどの $ad – bc$ や、サラスの方法の公式と全く同じものが導き出されます。
計算でよく使う行列式の性質
最後に、計算を楽にする行列式の重要な性質を2つ紹介します。
① 転置行列の行列式は変わらない
行列を転置(行と列を入れ替え)しても、行列式の値はそのままです。
$$\det(A^T) = \det(A)$$
これにより、「行」に関して成り立つ行列式の性質は、すべて「列」に関しても成り立つことになります。
② 積の行列式は、行列式の積に等しい
2つの行列の積の行列式は、それぞれの行列式を計算してから掛け合わせたものと等しくなります。
$$\det(AB) = \det(A)\det(B)$$
「$A$ で変換したあとに $B$ で変換したときの総合的な体積拡大率」は、「$A$ の拡大率」と「$B$ の拡大率」の掛け算になる、と図形的にイメージすれば非常に自然な性質です。
まとめ
今回のまとめです。
- 定義(2次): $\det(A) = ad – bc$
- 図形的な意味: 行列による空間の「面積(体積)の拡大率」。
- 逆行列との関係: $\det(A) = 0$ のとき、空間が潰れるため逆行列は存在しない。
- 厳密な定義: 置換 $\sigma$ と符号関数 $\text{sgn}$ を用いて、すべての成分の組み合わせを足し引きした形で表される。
- 重要な性質: $\det(A^T) = \det(A)$、$\det(AB) = \det(A)\det(B)$
行列式が単なる「文字の掛け算・引き算」ではなく、空間の体積を計算しているのだというイメージを持っておくと、この先の線形代数が理解しやすくなると思います!(^^)!
今回は以上です
ではまた(^^)/~~~


