スターリングの公式を導出する

統計力学

統計力学を学んでいると、状態数 $\Omega$ の計算などで「粒子の数の階乗($N!$)」が頻繁に登場します。

しかし、系に含まれる粒子数 $N$ はアボガドロ定数(約 $10^{23}$)のような途方もない巨大な数であるため、$N!$ をそのまま計算したり、微分したりすることは不可能です。

そこで、極めて大きい $N$ に対して $N!$ の対数を近似する「スターリングの近似式」が用いられます。

$$\ln N! \approx N \ln N – N$$

この記事では、なぜこのような近似式が成り立つのかを導出していきたいと思います(^^)/

まず、証明の対象である $\ln N!$ を分解してみましょう。

対数の性質 $\ln(A \times B) = \ln A + \ln B$ を使うと、階乗の掛け算を足し算に変換することができます。

$$\begin{align} \ln N! &= \ln(1 \times 2 \times 3 \times \dots \times N) \\ &= \ln 1 + \ln 2 + \ln 3 + \dots + \ln N \\ &= \sum_{x=1}^{N} \ln x \end{align}$$

これにより、問題は $y = \ln x$ という関数の $x = 1$ から $x = N$ までの足し合わせを求めることに帰着します。

$N$ が非常に大きい場合、離散的な足し算 $\sum$ は、連続的な積分 $\int$ に近似することができます。

グラフを思い浮かべてください。横軸に $x$、縦軸に $y = \ln x$ をとります。

$\sum_{x=1}^{N} \ln x$ という式は、グラフ上において「幅が $1$、高さが $\ln x$ である長方形(短冊)の面積を、横に $N$ 個並べて足し合わせたもの」と図形的に解釈できます。

$N$ が巨大になればなるほど、この階段状の長方形の面積の和は、滑らかな曲線 $y = \ln x$ の下側の面積とほとんど等しくなります。したがって、以下の近似が成り立ちます。

$$\sum_{x=1}^{N} \ln x \approx \int_{1}^{N} \ln x \, dx$$

近似式を積分に置き換えることができたので、あとはこの積分を計算するだけです。

$\ln x$ の積分は、被積分関数を $1 \times \ln x$ と見なして部分積分法を用いるのが定石です。

$$\begin{align} \int_{1}^{N} \ln x \, dx &= \int_{1}^{N} (x)’ \ln x \, dx \\ &= \left[ x \ln x \right]_{1}^{N} – \int_{1}^{N} x \cdot (\ln x)’ \, dx \\ &= \left[ x \ln x \right]_{1}^{N} – \int_{1}^{N} x \cdot \frac{1}{x} \, dx \\ &= \left[ x \ln x \right]_{1}^{N} – \int_{1}^{N} 1 \, dx \\ &= \left[ x \ln x – x \right]_{1}^{N} \end{align}$$

これに上限 $N$ と下限 $1$ を代入します。($\ln 1 = 0$ であることに注意します)

$$\begin{align} \left[ x \ln x – x \right]_{1}^{N} &= (N \ln N – N) – (1 \ln 1 – 1) \\ &= N \ln N – N – (0 – 1) \\ &= N \ln N – N + 1 \end{align}$$

積分の結果より、以下の関係が導かれました。

$$\ln N! \approx N \ln N – N + 1$$

ここで、統計力学において $N$ はアボガドロ定数スケール($\sim 10^{23}$)の極めて巨大な数です。

$N \ln N$ や $N$ といった巨大な項に比べると、最後の定数項の「$+1$」は塵のように小さく、物理的な計算においては完全に無視しても全く問題ありません。

したがって、「$+1$」を切り捨てることで、見慣れたスターリングの近似式が得られます。

$$\ln N! \approx N \ln N – N$$

スターリングの近似式は、以下の3つのステップで直感的に証明できます。

  1. 対数の性質で $\ln N!$ を和 $\sum \ln x$ に変換する。
  2. $N$ が十分に大きいとき、和を積分 $\int \ln x dx$ に近似する。
  3. 部分積分を用いて計算し、微小な定数項を無視する。

いかがだったでしょうか。

スターリングの近似はよく出てくるので、導出まで理解しておきましょう!(^^)!

今回は以上になります。

ではまた(^^)/~~~

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