ネーターの定理とは?ネーターチャージの一般的な導出をわかりやすく解説

解析力学

物理学において、エネルギー保存則、運動量保存則、角運動量保存則といった「保存則」は、系の運動を記述し、理解する上で極めて重要な役割を果たします。

ニュートン力学では、これらの保存則は運動方程式から個別に導出されていました。

しかし、解析力学の枠組みにおいて、ドイツの数学者エミー・ネーター(Emmy Noether)によって導かれた「ネーターの定理」は、これらの保存則が、物理法則が持つ「対称性」と深く、普遍的に結びついていることを明らかにしました。

本記事では、ネーターの定理の総論として、その概念と、物理学における3つの主要な対称性について概説します。

系のラグランジアン $L(q, \dot{q}, t)$ に対して、ある微小な連続変換(座標のわずかなズレなど)を施したとします。

この変換によって系の作用積分(あるいはラグランジアンそのもの)が変化しないとき、その系は「対称性を持つ」と言います。

ネーターの定理は、「系に連続的な対称性が存在すれば、それに対応する保存量が必ず存在する」と主張します。

任意の微小パラメータ $\epsilon$ によって特徴付けられる座標の連続変換を考えます。

各一般化座標 $q_i$ の変分 $\delta q_i$ を以下のように表します。

$$\delta q_i = \epsilon K_i(q, \dot{q}, t)$$

ここで、$K_i$ は変換の性質を決める関数です。この変換によってラグランジアン $L$ が全く変化しない($\delta L = 0$)と仮定します。

ラグランジアンの変分は、テーラー展開の1次近似により次のように計算されます。

$$\delta L = \sum_i \left( \frac{\partial L}{\partial q_i} \delta q_i + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} \delta \dot{q}_i \right) = 0$$

ここで、変分の時間微分と時間微分の変分が交換可能であること($\delta \dot{q}_i = \frac{d}{dt}\delta q_i$)を利用し、さらにオイラー・ラグランジュ方程式 $\frac{\partial L}{\partial q_i} = \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}\right)$ を第1項に代入します。

$$\sum_i \left\{ \left[ \frac{d}{dt} \left( \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} \right) \right] \delta q_i + \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} \frac{d}{dt}(\delta q_i) \right\} = 0$$

この式の左辺は、積の微分の公式 $\frac{d}{dt}(AB) = \dot{A}B + A\dot{B}$ を用いることで、一つの時間微分にまとめることができます。

一般化運動量 $p_i = \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}$ を用いると、式は以下のようになります。

$$\frac{d}{dt} \sum_i \left( p_i \delta q_i \right) = 0$$

微小パラメータ $\epsilon$ をくくり出すと、次のようになります。

$$\epsilon \frac{d}{dt} \sum_i \left( p_i K_i \right) = 0$$

$\epsilon$ は任意の定数であるため、時間微分の中身である $\sum_i p_i K_i$ が時間に対して一定(保存量)であることが証明されます。

これがネーターの定理の骨格であり、この保存量はネーター・チャージとも呼ばれます。

この一般的な導出枠組みに具体的な変換 $K_i$ を当てはめることで、私たちがよく知る物理学の保存則が導き出されます。

以降の記事で詳細に計算する3つの対称性の概要を提示します。

空間並進対称性と運動量保存則

対称性の意味:
宇宙のどの場所で実験を行っても、物理法則は変わらないという「空間の一様性」を表します。

変換の操作:
系のすべての座標を一斉に一定方向へ $\epsilon$ だけずらす変換($\delta q_i = \epsilon$)を考えます。

導出される保存則:
この変換に対してラグランジアンが不変である場合、系の全運動量が保存されます。

詳しい記事はこちらです↓↓↓

空間並進対称性から運動量保存則を導出:ネーターの定理をわかりやすく解説
前回の記事では、連続的な対称性が存在すれば必ず対応する保存量が存在するという「ネーターの定理」の一般的な枠組みを解説しました。前回の記事はこちらです↓↓↓本記事では、この枠組みを具体的な変換に適用して、「空間の平行移動」を扱います。それでは…

対称性の意味:
昨日実験を行っても、今日実験を行っても、物理法則は変わらないという「時間の一様性」を表します。

変換の操作:
時間の起点を $\epsilon$ だけずらす変換($t \to t + \epsilon$)を考えます。

導出される保存則:
ラグランジアンが時間を陽に含まない($\frac{\partial L}{\partial t} = 0$)場合、系の全エネルギー(ハミルトニアン)が保存されます。

詳しい記事はこちらです↓↓↓

時間並進対称性からエネルギー保存則を導出:ネーターの定理をわかりやすく解説
前回の記事では、ネーターの定理の適用例として「空間並進対称性」が運動量保存則を導く過程を解説しました。前回の記事はこちらです↓↓↓3つの主要な対称性についてざっくり学びたい方はこちらです↓↓↓今回の記事では、適用例の第2弾として「時間の平行…

回転対称性と角運動量保存則

対称性の意味:
宇宙のどの方向を向いて実験を行っても、物理法則は変わらないという「空間の等方性」を表します。

変換の操作:
系の座標軸をある回転軸の周りに微小な角度 $\delta\theta$ だけ回転させる変換を考えます。

導出される保存則:
この回転変換に対してラグランジアンが不変である場合、系の全角運動量が保存されます。

詳しい記事はこちらです↓↓↓

回転対称性から角運動量保存則を導出:ネーターの定理をわかりやすく解説
前回の記事ではネーターの定理の適用例として「時間並進対称性」がエネルギー保存則を導く過程を解説しました。前回の記事はこちらです↓↓↓3つの主要な対称性についてざっくり学びたい方はこちらです↓↓↓今回の記事では、ネーターの定理の適用例の第3弾…

物理法則が特定の変換に対して不変であるという「対称性」の条件から、運動方程式を解かずとも「保存則」を直接導き出せるのがネーターの定理の強力な点です。

次回の記事以降は3つの対称性について詳しく触れていきたいと思います(^^)/

ではまた!

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