ビオサバールの法則を用いた円形電流の中心軸上の磁場の導出をわかりやすく解説

電磁気学

本記事では、ビオ・サバールの法則を用いたもう一つの代表的な演習問題である「円形電流の中心軸上の磁場」の導出を解説します。

直線電流の計算では変数の置換積分がメインでしたが、円形電流では「系の対称性を利用して不要な成分を消去する」という考えが重要になります。

それではやっていきましょう!(^^)!

(前回の記事はこちらから読めます↓↓↓)

ビオサバールの法則を用いた直線電流の磁場の求め方をわかりやすく解説
今回は電磁気学において「電流が作る磁場」を直接計算できるビオ・サバールの法則について解説していきたいと思います(^^)/公式は難解に見えますが、演習を重ねることで慣れていくので、公式を確認した後、直線電流の磁場を実際にビオサバールの法則を使…

アンペールの法則は、無限に長い直線や円筒のような対称性の高い場合にしか簡単に解けません。

一方、ビオ・サバールの法則は、どんなに複雑な形の電流であっても、積分を頑張って計算すれば必ず磁場が求まるという万能な法則です。

(ちなみにアンペールの法則の記事はこちらから読めます↓↓↓)

アンペールの法則の意味/直線電流とソレノイドコイルの磁場を求める
本記事では、対称性の高い電流分布が作る磁場を極めて簡単に求めることができる「アンペールの法則」について解説し、代表的な問題(無限長直線電流・ソレノイドコイル)を解いていきたいと思います(^^)/アンペールの法則とはアンペールの法則は、任意の…

ある空間の観測点 $P$ における磁場 $\mathbf{B}$ は、回路全体を流れる電流の微小な部分(微小電流要素 $I d\mathbf{l}$)が作る微小な磁場 $d\mathbf{B}$ を、すべて足し合わせる(積分する)ことで求まります。

微小磁場 $d\mathbf{B}$ は、以下の式で与えられます。

$$d\mathbf{B} = \frac{\mu_0}{4\pi} \frac{I d\mathbf{l} \times \mathbf{r}}{r^3}$$

  • $\mu_0$:真空の透磁率
  • $I d\mathbf{l}$:微小電流要素(電流の大きさと、微小な長さ・向きを持つベクトル)
  • $\mathbf{r}$:微小電流要素から観測点 $P$ に向かう位置ベクトル(その大きさが $r$)
  • $\times$:ベクトルの外積

それでは、実際に問題を解いていきましょう。

【問題】

半径 $a$ の円形の細い導線に、定常電流 $I$ が流れています。この円形電流の中心を原点 $O$ とし、円を含む平面を $xy$ 平面とします。円の中心を通り $xy$ 平面に垂直な $z$ 軸上において、原点から距離 $z$ だけ離れた観測点 $P$ における磁場 $\mathbf{B}$ を求めなさい。

【解法】

1.微小要素と位置ベクトルの定義

円周上の位置を角度 $\phi$($0 \le \phi < 2\pi$)を用いて表します。

微小な角度 $d\phi$ に対応する微小電流要素 $I d\mathbf{l}$ と、観測点 $P$ への位置ベクトル $\mathbf{r}$ を成分で書き下します。

  • 電流要素の位置:
    $$(a\cos\phi, a\sin\phi, 0)$$
  • 微小電流ベクトル $d\mathbf{l}$:
    円の接線方向を向くため、位置ベクトルを $\phi$ で微分して $d\phi$ を掛けたものになります。$$d\mathbf{l} = (-a\sin\phi, a\cos\phi, 0) d\phi$$
  • 観測点 $P$ の位置:
    $$(0, 0, z)$$
  • 要素から $P$ へのベクトル $\mathbf{r}$:
    (観測点の位置) – (要素の位置) なので、
    $$\mathbf{r} = (-a\cos\phi, -a\sin\phi, z)$$
  • 距離 $r$:
    $$r = \vert{}\mathbf{r}\vert{} = \sqrt{(-a\cos\phi)^2 + (-a\sin\phi)^2 + z^2} = \sqrt{a^2 + z^2}$$

2.外積の計算と対称性の考察

式の分子にある外積 $d\mathbf{l} \times \mathbf{r}$ を成分ごとに計算します。

$$d\mathbf{l} \times \mathbf{r} = \begin{pmatrix} -a\sin\phi \\ a\cos\phi \\ 0 \end{pmatrix} \times \begin{pmatrix} -a\cos\phi \\ -a\sin\phi \\ z \end{pmatrix} d\phi = \begin{pmatrix} (a\cos\phi)(z) – (0)(-a\sin\phi) \\ (0)(-a\cos\phi) – (-a\sin\phi)(z) \\ (-a\sin\phi)(-a\sin\phi) – (a\cos\phi)(-a\cos\phi) \end{pmatrix} d\phi$$

整理すると、以下のようになります。

$$d\mathbf{l} \times \mathbf{r} = (a z \cos\phi, a z \sin\phi, a^2) d\phi$$

これをビオ・サバールの法則の式に代入すると、微小磁場 $d\mathbf{B}$ の各成分が得られます。

ここで、円周全体($\phi = 0 \to 2\pi$)で積分することを考えます。

  • $x$ 成分には $\cos\phi$ が含まれるため、$\int_0^{2\pi} \cos\phi \, d\phi = 0$
  • $y$ 成分には $\sin\phi$ が含まれるため、$\int_0^{2\pi} \sin\phi \, d\phi = 0$

つまり、円の中心軸に対して垂直な成分($x, y$ 成分)は、円の反対側にある電流要素が作る磁場と完全に相殺し合って消滅します。計算を進める必要があるのは $z$ 成分のみです。

3.積分の実行

残った $z$ 軸方向の微小磁場 $dB_z$ は以下の通りです。

$$dB_z = \frac{\mu_0 I}{4\pi} \frac{a^2}{(a^2 + z^2)^{3/2}} d\phi$$

被積分関数の中に $\phi$ に依存する変数がない($a$ も $z$ も定数扱い)ため、積分は単に $d\phi$ を $0$ から $2\pi$ まで足し合わせるだけとなります。

$$B_z = \int_0^{2\pi} \frac{\mu_0 I a^2}{4\pi (a^2 + z^2)^{3/2}} d\phi = \frac{\mu_0 I a^2}{4\pi (a^2 + z^2)^{3/2}} \times 2\pi$$

結果として、円形電流の中心軸上の磁場の大きさは以下のように求まります。

$$B = \frac{\mu_0 I a^2}{2(a^2 + z^2)^{3/2}}$$

円の中心 ($z = 0$) における磁場

観測点が円の中心にある場合、求めた式に $z = 0$ を代入します。

$$B = \frac{\mu_0 I a^2}{2(a^2)^{3/2}} = \frac{\mu_0 I a^2}{2a^3} = \frac{\mu_0 I}{2a}$$

これは、高校物理でも登場する「円形電流の中心の磁場」の公式そのものです。

遠方 ($z \gg a$) における磁場と磁気双極子

観測点が円の半径 $a$ に比べて非常に遠くにある($z \gg a$)場合を考えます。分母を近似すると $a^2 + z^2 \approx z^2$ となるため、

$$B \approx \frac{\mu_0 I a^2}{2(z^2)^{3/2}} = \frac{\mu_0 I a^2}{2z^3}$$

ここで、円形電流が囲む面積を $S = \pi a^2$ とし、電流と面積の積を磁気双極子モーメント $m = IS$ と定義します。

この $m$ を用いて先ほどの式を書き換えます。

$$B \approx \frac{\mu_0 (I \pi a^2)}{2\pi z^3} = \frac{\mu_0 m}{2\pi z^3}$$

この式は、微小な棒磁石(磁気双極子)が遠方に作る磁場と全く同じ形をしています。

つまり、離れた場所から観測すると、円形電流は1つの小さな磁石として振る舞うことが数式からも確認できます。

いかがだったでしょうか

ビオサバールの法則を使って自力で磁場を求められるようになりましょう!(^^)!

ではまた(^^)/~~~

タイトルとURLをコピーしました