本記事では、ベクトル解析における3つの積分演算(線積分、面積分、体積積分)について、数学的な定義と具体的な計算手法を解説していきたいと思います(^^)/
導入
1変数の定積分が「直線上の区間」を積分領域とするのに対し、多変数関数のベクトル解析では、空間内のより複雑な図形を積分領域として扱います。
- 1次元の領域(曲線)上の積分を「線積分」
- 2次元の領域(曲面)上の積分を「面積分」
- 3次元の領域(立体)上の積分を「体積積分」
と定義します。
これらは、スカラー場およびベクトル場に対して適用されます。
線積分
線積分は、空間内の指定された曲線に沿って関数を積分する演算です。
定義
曲線 $C$ に沿った微小な線要素の長さを $ds$、線要素のベクトルを $d\vec{r} = (dx, dy, dz)$ とします。
- スカラー場 $f$ の線積分:$$\int_C f ds$$
- ベクトル場 $\vec{A}$ の線積分(内積型):$$\int_C \vec{A} \cdot d\vec{r}$$
幾何学的な意味
ベクトル場の線積分 $\int_C \vec{A} \cdot d\vec{r}$ は、曲線 $C$ の各点におけるベクトル場 $\vec{A}$ の接線成分の総和を求める操作です。

計算例
媒介変数 $t$ を用いて $\vec{r}(t) = (t, t^2, 0)$ ($0 \le t \le 1$)で表される曲線 $C$ に沿って、ベクトル場 $\vec{A}(x, y, z) = (y, x, 0)$ の線積分を計算します。
- 線要素ベクトル $d\vec{r}$ を $t$ で表します。$$d\vec{r} = \left( \frac{dx}{dt}, \frac{dy}{dt}, \frac{dz}{dt} \right) dt = (1, 2t, 0) dt$$
- 曲線 $C$ 上のベクトル場 $\vec{A}$ を $t$ で表します。$x=t, y=t^2$ より、$$\vec{A}(\vec{r}(t)) = (t^2, t, 0)$$
- 内積 $\vec{A} \cdot d\vec{r}$ を計算し、定積分を実行します。$$\int_C \vec{A} \cdot d\vec{r} = \int_{0}^{1} (t^2 \cdot 1 + t \cdot 2t + 0) dt = \int_{0}^{1} 3t^2 dt = \left[ t^3 \right]_{0}^{1} = 1$$
面積分
面積分は、空間内の指定された曲面上に分布する関数を積分する演算です。
定義
曲面 $S$ 上の微小な面積要素を $dS$、曲面に対し垂直な単位法線ベクトルを $\vec{n}$、ベクトル面積要素を $d\vec{S} = \vec{n} dS$ とします。
- スカラー場 $f$ の面積分:$$\iint_S f dS$$
- ベクトル場 $\vec{A}$ の面積分(内積型):$$\iint_S \vec{A} \cdot \vec{n} dS = \iint_S \vec{A} \cdot d\vec{S}$$
幾何学的な意味
ベクトル場の面積分 $\iint_S \vec{A} \cdot \vec{n} dS$ は、曲面 $S$ を垂直に貫くベクトル場の成分の総量(流束、フラックス)を求める操作です。

計算例
平面 $z = 1$ のうち、$0 \le x \le 1$ かつ $0 \le y \le 2$ で囲まれた長方形の領域を曲面 $S$ とします。
この $S$ を上向き($z$軸の正の向き)に貫く単位法線ベクトルは $\vec{n} = (0, 0, 1)$ です。ベクトル場 $\vec{A}(x, y, z) = (x, y, z^2)$ の面積分を計算します。
- 内積 $\vec{A} \cdot \vec{n}$ を計算します。$$\vec{A} \cdot \vec{n} = (x, y, z^2) \cdot (0, 0, 1) = z^2$$
- 曲面 $S$ 上では常に $z = 1$ であるため、$z^2 = 1$ となります。
- $x, y$ に関する重積分を実行します。面積要素は $dS = dxdy$ となります。$$\iint_S (\vec{A} \cdot \vec{n}) dS = \iint_S 1 \, dxdy = \int_{0}^{1} dx \int_{0}^{2} dy = [x]_{0}^{1} [y]_{0}^{2} = 1 \cdot 2 = 2$$
体積積分
体積積分は、3次元空間内の指定された立体領域にわたって関数を積分する演算です。
定義
立体領域 $V$ における微小な体積要素を $dV = dxdydz$ とします。
- スカラー場 $f$ の体積積分:$$\iiint_V f dV = \iiint_V f(x, y, z) dx dy dz$$
幾何学的な意味
指定された3次元領域 $V$ の内部に分布するスカラー量 $f$ の、空間的な総和を求める操作です。
(※ベクトル場の体積積分も定義可能ですが、各成分ごとのスカラー場の積分に帰着します。)

計算例
直方体領域 $V$ を $0 \le x \le 1$、$0 \le y \le 2$、$0 \le z \le 3$ とします。スカラー場 $f(x, y, z) = xyz$ の体積積分を計算します。
- 1. $x, y, z$ それぞれについて定積分を実行します(積分変数が独立しているため分離して計算可能です)。
$$\iiint_V xyz \, dxdydz = \int_{0}^{1} x \, dx \int_{0}^{2} y \, dy \int_{0}^{3} z \, dz$$ - 2. それぞれの積分を計算して掛け合わせます。
$$\left[ \frac{1}{2}x^2 \right]_{0}^{1} \cdot \left[ \frac{1}{2}y^2 \right]_{0}^{2} \cdot \left[ \frac{1}{2}z^2 \right]_{0}^{3} = \frac{1}{2} \cdot \frac{4}{2} \cdot \frac{9}{2} = \frac{1}{2} \cdot 2 \cdot \frac{9}{2} = \frac{9}{2}$$
まとめ
本記事で解説した各積分演算について、積分領域の次元、使用する微小要素を以下の表にまとめます。

こんな感じです!
今回はここまでです。
ではまた(^^)/~~~


