前回の記事では、連続的な対称性が存在すれば必ず対応する保存量が存在するという「ネーターの定理」の一般的な枠組みを解説しました。
前回の記事はこちらです↓↓↓

本記事では、この枠組みを具体的な変換に適用して、「空間の平行移動」を扱います。
それではやっていきましょう!(^^)!
空間並進対称性の数学的表現
系が空間的に一様である場合、系全体を一定の方向へ平行移動させても物理法則(ラグランジアン)は変化しません。
系を構成する任意の一般化座標 $q_i$ を、微小な定数 $\epsilon$ だけ一斉に移動させる並進変換を定義します。
$$q_i \to q_i + \epsilon$$
このとき、座標の変分 $\delta q_i$ は以下のようになります。
$$\delta q_i = \epsilon$$
また、この変換は位置を定数だけずらす操作であるため、速度 $\dot{q}_i$ は変化しません($\delta \dot{q}_i = 0$)。
空間が一様である系においては、この平行移動によって系のラグランジアン $L(q, \dot{q}, t)$ の値が変化しないため、以下の不変性の条件が成り立ちます。
$$\delta L = 0$$
運動量保存則の導出(ネーターチャージの計算)
前回の記事で導出したネーターの定理における座標変換の基本式は $\delta q_i = \epsilon K_i$ でした。
今回の空間並進変換 $\delta q_i = \epsilon$ と比較すると、関数 $K_i$ は定数 $1$ であることが特定できます。
$$K_i = 1$$
ネーターの定理から導かれる保存量(ネーターチャージ)は $\sum_i p_i K_i$ で定義されます。
ここに $K_i = 1$ を代入すると、以下の量が保存することが直接的に導かれます。
$$\sum_i p_i = \text{一定}$$
ここで $p_i$ は一般化運動量です。
つまり、空間の並進対称性は「系の全運動量の保存」を導くことがわかります。
直接的な変分計算によるアプローチ
ネーター・チャージの公式を使わず、ラグランジアンの変分から直接導出することも可能です。
ラグランジアンの変分 $\delta L$ を計算します。
$$\delta L = \sum_i \frac{\partial L}{\partial q_i} \delta q_i = \epsilon \sum_i \frac{\partial L}{\partial q_i} = 0$$
$\epsilon$ は任意の微小な定数であるため、和の部分が $0$ にならなければなりません。
$$\sum_i \frac{\partial L}{\partial q_i} = 0$$
ここで、オイラー・ラグランジュ方程式 $\frac{\partial L}{\partial q_i} = \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}\right)$ と、一般化運動量の定義 $p_i = \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}$ を用いると、$\frac{\partial L}{\partial q_i} = \dot{p}_i$ となります。
これを上の式に代入します。
$$\sum_i \dot{p}_i = \frac{d}{dt} \sum_i p_i = 0$$
これを時間積分することで、全運動量 $\sum_i p_i$ が時間的に一定(保存する)ことが示されます。
多粒子系における全運動量の保存(具体例)
より具体的なイメージを持つため、相互作用する2粒子系を考えます。
2つの粒子の座標を $q_1, q_2$ とし、ポテンシャルエネルギー $V$ が粒子間の相対距離 $(q_1 – q_2)$ のみに依存する系を設定します。
$$L = \frac{1}{2}m_1\dot{q}_1^2 + \frac{1}{2}m_2\dot{q}_2^2 – V(q_1 – q_2)$$
系全体を同じ量 $\epsilon$ だけずらす並進変換($q_1 \to q_1 + \epsilon, \quad q_2 \to q_2 + \epsilon$)を行います。
このとき、ポテンシャルエネルギーの引数は以下のようになります。
$$(q_1 + \epsilon) – (q_2 + \epsilon) = q_1 – q_2$$
相対距離は変化しないため、ポテンシャルエネルギー $V$ は不変です。
運動エネルギーも速度が変わらないため不変です。
したがって、ラグランジアン全体が不変($\delta L = 0$)となります。
この結果として、ネーターの定理により以下の保存則が成立します。
$$p_1 + p_2 = \text{一定}$$
粒子同士が相互作用を及ぼし合うため、個々の粒子の運動量($p_1$ や $p_2$)は時間とともに変化する可能性がありますが、「系の全運動量」は常に保存され続けることが数式から確認できます。
まとめ
空間の平行移動に対して物理法則が変わらないという「空間の一様性(空間並進対称性)」は、ネーターの定理を経由することで、力学系における「全運動量保存則」を導きます。
次回の記事では、もう一つの重要な対称性である「時間並進対称性」を扱い、これがどのようにしてエネルギー保存則を導くのかを解説します。
ではまた(^^)/~~~


